%e3%83%93%e3%83%ab%e5%a3%b2%e5%8d%b4%e4%ba%8b%e4%be%8bビル売却事例

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老舗アパレル企業「イトキン」のビル売却事例やその背景を解説

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自社の事業縮小や経営見直し、資金確保などの理由でどのような企業でも「ビルの売却」が選択肢となることがあります。本記事では、多くの著名ブランドを擁する国内有数の老舗アパレル企業「イトキン株式会社」のビル売却事例をご紹介しな […]

自社の事業縮小や経営見直し、資金確保などの理由でどのような企業でも「ビルの売却」が選択肢となることがあります。本記事では、多くの著名ブランドを擁する国内有数の老舗アパレル企業「イトキン株式会社」のビル売却事例をご紹介しながら、様々な企業にとってのビル売却の意義・役割なども解説します。

▼ビル売却の事例についてはこちらの記事でも総合的にまとめています。ぜひあわせて参考になさってください。
大規模なビル売却事例を2021年~2023年からピックアップしてご紹介! 売却の流れやポイントも解説

イトキンがビル売却をおこなった背景や現在のビジョンを整理してご紹介

保有資産としてのビルを売却して資金を確保することは多くのメリットがあり、企業の状況によっては、事業の将来性を確保するための重要な“一手”ともなります。

今回は、国内老舗のアパレル企業であるイトキン株式会社の事例をご紹介します。

イトキン株式会社(ITOKIN)の概要

イトキン株式会社は、東京都渋谷区の千駄ヶ谷に本社を置く(2024年3月現在)、アパレルの製造・販売をおこなっている企業です。
成り立ちとしては1950年(昭和25年)に、当時の繊維産業の中心地であった大阪市船場にて「糸金商店」として創業と、大変古い歴史を持つ会社で、現在まで婦人服を中心としつつ紳士服・子供服まで幅広いブランドを展開しています。海外企業やブランドとの提携もおこなっており、国内有数の著名なアパレル企業といえるでしょう。

イトキンが展開する衣料品ブランドの一例

レディースファッションブランドとしての地位を確立している「a.v.v(アー・ヴェ・ヴェ)」や「A de a.v.v(アード アー・ヴェ・ヴェ)」、コシノ ヒロコ氏がデザインを務める「HIROKO KOSHINO(ヒロコ コシノ)」といった主要ブランドのほか、40代~50代をメインターゲットとした「CHRISTIAN AUJARD(クリスチャンオジャール)」、SDGsに特化したブランド「blue serge(ブルーサージ)」、主に百貨店展開をしている「MICHEL KLEIN(ミッシェル クラン)」や「Sybilla(シビラ)」、「GIANNI LO GIUDICE(ジャンニ ロ ジュディチェ)」などなど、年齢・性別問わず多くのファッション好きへ訴求する多数のブランドを展開しています。

近年の競合急増による影響

1980年代には香港を皮切りに多数の海外拠点を展開、1990年代中期までは主にラジオで「世界のファッション、イトキン」というCMを耳にすることも多く、誰もが知る日本の老舗アパレルブランドであった「ITOKIN」ですが、近年ではいくつかの、苦境といえる事態を迎えています。
2000年代初頭に1500億円あった売り上げは、2012年~2015年と4年連続の赤字となり952億円にまで落ち込みました。

この事態の背景には、2008年のリーマンショックや2014年の消費増税に加え、イトキンが主戦場としていた百貨店でのアパレル販売において、ユニクロや無印良品などのカジュアルSPA(自分たちで製造し販売までおこなう製造小売り)や、海外のファストファッション、セレクトショップといった競合が大きく台頭してきたことが大きく影響したともいわれています。

春物の仕入れの支払いを乗り切れないのではないか、とまで業界内で危ぶむ声があがったイトキンですが、結果、2015年末に主力取引行の三菱東京UFJ銀行からの持ちかけを受け、外部資本の受け入れを選択しました。最終的にイトキンを買収したのは、航空会社スカイマークの再建やアパレルメーカー支援の実績もあった投資会社の「インテグラル株式会社」です。買収総額は、負債を含めておよそ165億円とされています。

イトキンの創業家たちは、何よりもイトキンというブランドを消滅させないためにという意思で、外部資本を受け入れて自分たちは経営から身を引いたのです。

経営の見直し、店舗展開の縮小を実施

イトキンを買収したインテグラル社は、ブランドの見直しにとりかかります。当時28あったブランドを21に集約し、またおよそ1,400店ほどあった店舗数も、地方の百貨店を中心に400店ほどは閉鎖し、1,000店まで減らしました。製造や販売チャネルを集約し、コストを削減したのです。
あわせて、特に競争力を持つブランドに対して店舗改装でさらに競争力を高め、販売チャネルについてはカジュアルSPAやファストファッションブランドが競合となる百貨店での販売比率は下げつつ、都市型ショッピングセンターやインターネット上での販売を強化していきました。

神宮前の自社ビルを売却

イトキンは、2017年に東京・渋谷の「神宮前ビル」を売却しました。
神宮前ビルは、1977年に竣工した自社ビルで、若者のファッショントレンドの中心地である原宿駅にも近い場所に立地する7階建てのビルです。

経営の立て直しを図るなかでの売却とみられていますが、売却額については各メディアやニュース等でも非公表となっています。

イトキンは2016年から中期経営計画を開始しており、事業の構造改革・成長戦略の土台作りという観点で、上記の自社ビル売却のほか、EC販売チャネルの強化、市場や消費者ニーズの変化への対応、サービスレベルの向上としてファッション通販サイト 「ITOKIN Online Store」 の再構築もおこなっています。

イトキンの2024年3月現在の拠点やビジョン

イトキン株式会社の現在の拠点としては、東京都渋谷区千駄ヶ谷に東京本社、そして大阪市中央区と札幌市中央区、福岡市博多区に支店が存在しています。また茨城県笠間市には大規模な物流センターも構えています。

イトキンは現在もファッションを通じて人と社会に貢献する企業として、国内で古くからある老舗ブランドとしての地位を維持しています。
同社が2023年~2024年にかけて公式ホームページで公表している最新のビジョン「ITOKIN IDEA(英語読みの“アイデア”ではなく、「本質」や「永遠普遍の価値」を意味する哲学用語“イデア”)」では、「IDEA」の各文字に以下に紹介するような意味をそれぞれ込め、今後の企業改革の究極の目標として掲げています。

I……Innovative(自己革新)
D……Dynamic(大胆かつ前向きなチャレンジ)
E……Exciting(豊かな創造性、溢れる活力)
A……Ambitious(自主独立と高い志)

経営における「ビル売却」の意味・効果

事業ビルは、例えば戸建て住宅やマンションなどと異なり、収益性が大変重視される不動産です。そのため、売却時には買い手となる不動産投資家や法人によって、収益性についての厳密な審査がおこなわれます。

近年、大企業・中小企業など事業規模問わず、自社ビルの売却に踏み切る事例が増えてきています。 ビル売却をおこなう理由は企業ごとにそれぞれです。
例えば、世間一般的に不動産価格が“高止まり”していることから、既存資産の組み換え、新たな事業への投資のために現金を確保といったように、建設的な理由によるビル売却も多くあります。
一方で、新型コロナウイルス感染拡大を始めとした社会変化によって業績の落ち込みが発生してしまい、損失の補填や事業縮小の目的でやむなく売却する場合もあります。

また、企業における自社オフィスや施設の在り方、従業員の働き方自体にも近年では様々な変化が起きており、リモートワーク、フリーアドレスといった新しい働き方へ対応するにあたって不動産を整理する動きもみられます。例えば複数の都道府県にわたっていた拠点を整理・集約したり、オフィスを都心部よりも安価な地方へ移転したりなどです。

逆に「自社ビルを保有する」意義とは?

世間の傾向として、自社ビルの売却は意義のある選択ですが、逆に例えば多少のコストがかさんでも、財務状況が厳しい状態にあってもあえて自社ビルを維持する、という選択をとる場合もあります。

こういった場合の理由としては、例えば長期的に考えた場合に、修繕費を考慮したとしても賃貸よりは自社ビルを所有しつづける方がコストをおさえられるという結論の場合があります。
また、取引先や顧客に対して、自社の健全性をアピールしたいという理由の場合もあります。そもそも自社ビルを保有しつづけるためには、充分な手元資金や財務基盤、そして業績の安定性などが必要になってきます。そのため、「自社ビルを所有している企業」はすなわち、世間からは「財務状況が健全である」と受け取られやすいでしょう。

さらに、対外的なことだけでなく、自社ビルを保有していることは社員の帰属意識にも良い影響を与える場合があります。
例えばビル内の一部のフロアに社員が快適に過ごすためのカフェをつくったり、託児施設を導入したりといった自由で大規模な施設設計は自社ビルだからこそできることです。こうした福利厚生の充実は、社員の満足感向上・エンゲージメント向上につながります。

自社ビルの売却を検討する際は、こういった「保有する場合のメリット」も考え合わせたうえで検討することが大切になるでしょう。

著名企業のビル売却事例も参考に、自社ビルの売却について検討しよう

本記事ではあくまで一例としてイトキン株式会社の過去のビル売却事例をピックアップしましたが、近年においてもビルの売却に関するニュースは様々な業界において定期的に報じられており、今後もビルを売却するという選択をとる企業は増えていくと予想されています。

まとめ

コロナ禍を経ての働き方の変容、業績の悪化やその他の事情など、企業ごとの様々な理由で、今後さらに有名企業のビル売却関連の情報が増えていくかもしれません。