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日本サッカー協会自社ビル「旧JFAハウス」100億円超の売却事例

サッカーグラウンド

東京都文京区にあった日本サッカー協会の自社ビル、通称「JFAハウス」は三井不動産レジデンシャル株式会社と売買契約が結ばれ、2023年に売却されました。跡地は他の用途に活用されることが決定しています。今回の記事では、日本サ […]

東京都文京区にあった日本サッカー協会の自社ビル、通称「JFAハウス」は三井不動産レジデンシャル株式会社と売買契約が結ばれ、2023年に売却されました。跡地は他の用途に活用されることが決定しています。今回の記事では、日本サッカー協会の自社ビル売却の事例とともに、売却に至るまでの背景や自社ビルを持つまでの経緯を解説します。ぜひ参考にしてください。

ビル売却の事例については、以下でもまとめていますので、参考にして下さい。

大規模なビル売却事例を2021年~2023年からピックアップしてご紹介! 売却の流れやポイントも解説

日本サッカー協会自社ビル「旧JFAハウス」売却の概要

日本サッカー協会の自社ビル「JFAハウス」の売却については、2022年3月15日に実施された日本サッカー協会(JFA)の臨時理事会終了後に発表されました。須原清貴専務理事は、「JFAハウスの有効活用検討の件」として、「JFAハウスの土地建物に関する売買契約を、三井不動産レジデンシャル株式会社と締結することを本日の臨時理事会において承認された」とオンラインブリーフィングで発言しました。日本サッカー協会と三井不動産レジデンシャル株式会社との間に結ばれた売買契約は非公開となっていますが、売却金額は推定100億円超と言われています。

売却に至った詳細な理由はのちほど解説しますが、2020年以降、人々の生活や経済に深刻な打撃を与えた新型コロナウイルスの影響は、スポーツ界にもおよんでいました。日本サッカー協会はコロナ禍により大きな赤字を抱えていたのです。そこで2021年10月に三井不動産と「サッカーの力を活用した街づくり連携および拠点再編に関する基本協定」を締結しています。その中の検討項目のひとつとして「JFAハウス(日本サッカー協会自社ビル)の有効活用」が設けられていました。コンサルタント役として不動産売買に関する十分な経験と知見を持つ業界上位の信託銀行が参入したうえで、自社ビルの売却という選択肢が提案されたのです。

日本サッカー協会は自社ビル売却後、2024年6月より同じ文京区後楽にある「トヨタ東京ビル」に移転し、そこを新たな「JFAハウス」としています。

日本サッカー協会の概要

日本サッカー協会の組織としての概要を以下にまとめました。

正式名称 公益財団法人 日本サッカー協会
役職一覧 名誉総裁:高円宮妃久子殿下
会長:宮本 恒靖
副会長:岡田 武史、野々村 芳和、西原 一将
専務理事:湯川 和之
組織歴 協会設立:1921年
FIFA加盟:1929年
AFC加盟:1954年
2024年4月時点での自社ビル(現JFAハウス)所在地 〒112-0004 東京都文京区後楽1丁目4−18 トヨタ東京ビル
公式Webサイト https://www.jfa.jp/

日本サッカー協会自社ビル「旧JFAハウス」の概要

「旧JFAハウス」(正式名称日本サッカー協会ビル)は、東京都文京区サッカー通りにあった日本サッカー協会の自社ビルです。最寄り駅のJR・東京メトロ御茶ノ水駅から徒歩約7分の立地にあります。

施工されたのは1992年で、地上11階、地下3階、床面積は延べ2万2994㎡の建物です。1階と地下1・2階の計3フロアには「日本サッカーミュージアム」が設けられていました。建物内には、日本サッカー協会の事務所のほか、都内のJリーグチーム、JFL、日本女子サッカーリーグなどの本部がテナントとして入居していました。

自社ビル前の通りはかつて「金花通り」の名称でしたが、日本サッカー協会が文京区と交渉した結果「サッカー通り」に改称されました。

日本サッカー協会が自社ビルを持った背景

売却された日本サッカー協会自社ビルは、かつて「三洋電機マーケティング・プラザビル」として活用されていました。2003年、日本サッカー協会が三洋電機より同ビルを約60億円で購入します。当時、購入資金はキャッシュで支払われ、2002年のワールドカップ日韓共催試合の黒字額であったおよそ130億円の一部に、ワールドカップが赤字となったときの補填用資金を合わせたものから支出されています。

日本サッカー協会が自社ビルを持つ前は、岸記念体育会館内の一室を事務所としていた経緯があり、1990年代は渋谷区内のオフィスビル賃貸が事務所確保の手段でした。また、Jリーグや女子サッカーリーグの事務所なども都内各所に点在した状態となってました。そこで組織の機能を一元化する目的で、ワールドカップでの黒字収益を活用し、日本サッカー界の関係組織を集結させた念願の自社ビルを持つこととなったのです。

日本サッカー協会が自社ビルを売却した理由

日本サッカー協会が自社ビルを売却したおもな理由を、報じられている範囲で解説します。

コロナ禍による収益減

日本サッカー協会が自社ビルを売却したもっとも大きな理由が、コロナ禍による収益減です。日本国内のサッカー関連では、コロナ禍によって以下のような影響を受けています。

年 コロナ禍による影響
2020年 ・国際親善試合の国内開催中止
・ワールドカップ予選の国内開催中止
2021年 ・国際親善試合の開催3試合のみ
(※ジャマイカ代表戦はPCR検査の陰性証明提出の手違いにより開催中止)
・日本代表対U‐24代表「兄弟マッチ」無観客開催
・セルビア代表戦無観客開催
・韓国代表戦観客数上限開催
・ワールドカップ予算6試合無観客または観客数上限開催

本来、日本代表戦が日本国内でのホーム開催時には、国際親善試合の場合でもチケット販売、スタジアム内外でのグッズ販売、およびテレビ放映権などを合算すると1試合当たりおよそ5億円もの売り上げが期待できるといわれています。ところがコロナ禍による試合数や観客動員数の減少で、日本サッカー協会は大きな打撃を受け、純利益は減少しました。

2016年度には約11億円だった日本サッカー協会の「当期一般正味財産増減額」は、2018年度から赤字に転落します。2018年度は約2億4500万円、2019年度は約6億1000万円、2020年度では約8億2000万円と赤字額は年々増加し、2021年度には28億円を上回る赤字を計上しました。さらに2022年度では、赤字額が過去最高となる約46億円と試算されています。

日本サッカー協会の赤字経営が続くことに加えて、2022年時点で自社ビルの修繕費についても、以後の8年間で14億円を超えると推測されていました。その結果、最終的に自社ビルを保持できる経営状態にないと判断し、売却を決めたとされています。

下部組織のための資金確保

日本サッカー協会は売却発表時、売却は赤字を埋めるためではないと公表しています。当時須原専務理事は「赤字のほとんどは積立金で対応できる」と強調していました。ただし、日本サッカー協会は日本代表戦やJリーグといったプロサッカー組織だけでなく、街のサッカークラブ支援やスクールの支援をおこなう公益財団法人としての役割も担っています。

コロナ禍により、地域のサッカークラブやスクールも資金難に陥るところが少なくありません。日本サッカー協会では2020年度より「サッカーファミリー復興支援事業費」を設けるなどして、実際にサッカーの下部組織を支援するための予算を計上しています。積立金をすべて赤字補填に使うのではなく、下部組織支援のためのまとまった資金を保持しておく必要があったことも、自社ビルの売却の要因となっています。

リモートワークの定着

コロナ禍や働き方改革により、日本サッカー協会にもリモートワークが拡大しました。その結果リモートでも問題なく業務を進められる環境が整ったことで、自社ビル内のオフィススペースの活用率が大幅に減少したことも、自社ビル売却の一因となっています。

日本サッカー協会のプレスリリースでは、2022年当時直近1年間の月間出勤率の平均は19.5%、もっとも高い月でも26.7%とされており、オフィススペースのうち75%から80%までもが活用されていない状況にありました。同じ敷地内のJリーグのオフィスなどのテナント各社も、同じような状況にあるとしています。

この報告からも、社員が出勤しなくても業務を進められることから自社ビルを構える必要性が低下したということが、売却を後押しした理由になったと見てとれます。

内部の組織分裂

自社ビル売却となった直接的な理由とはいえませんが、ビル内で同居する日本サッカー協会とJリーグ各チームとの間で分裂があったことも自社ビルを手放すことに影響したと考えられています。自社ビルの売却決定後、日本サッカー協会とJリーグは同居せず、別々の移転先候補地を模索していました。

Jリーグが日本サッカー協会からの独立を検討したタイミングであったことも、自社ビルの売却に影響したと言えるでしょう。

売却後の日本サッカー協会自社ビル跡地の活用方法

売却された日本サッカー協会自社ビルは、三井不動産レジデンシャルによってRC造地下3階地上23階建て、延べ3万2070㎡、高さ77メートルの共同住宅へ建て替えられることが決定しています。設計は日建ハウジングシステム、施工は東急建設が担当し、2024年9月1日の着工、2028年4月30日の完成を目指しています。

ビルの売却は専門家のサポートを受けることが重要

日本サッカー協会は自社ビルの売却発表から約2年で売却手続きや移転を完了しています。また、売却の話が持ち上がってから売却発表までは、わずか数ヶ月でした。スムーズに自社ビルの売却が実現した背景には、大手の不動産会社や、コンサルタント役を担った信託銀行からのサポートがあったからこそと言えるでしょう。

ビルの売却をご検討の際には、業界の豊富なノウハウや実績を持つプロのサポートが必須です。「ビル売却どっとこむ」は、ビル売却の専門家として、ビル売却の方法や手順、税金関係などのアドバイスやサポートを行っています。ぜひお気軽にご相談ください。

日本サッカー協会自社ビル売却事例からみるビル売却

日本サッカー協会自社ビル「旧JFAハウス」の売却の背景や理由、売却後の活用の動きなどを解説しました。コロナ禍をはじめとした不測の事態が発生すると、大きな組織でも経営状況が一転不安定となることがあります。

まとめ

自社ビル売却は赤字の補填だけでなく、組織としての活動資金の保持やリモート業務拡大のよるコスト削減などの面でも、有効な一手であることが今回の事例から分かりました。ビル売却を含め、経営状況や資金状況に合わせて柔軟な対応を行うことが重要です。