2024年04月19日
広告代理店最大手、「電通」の本社ビル売却はどのような経緯だった? 時系列でまとめて解説
国内の広告代理店最大手である電通が汐留の本社ビルを売却した際には、どのような動きがみられたのでしょうか。 本記事では時系列にそって、参考となる情報をまとめています。 ▼ビル売却の事例についてはこちらの記事でも総合的にまと […]
国内の広告代理店最大手である電通が汐留の本社ビルを売却した際には、どのような動きがみられたのでしょうか。
本記事では時系列にそって、参考となる情報をまとめています。
▼ビル売却の事例についてはこちらの記事でも総合的にまとめています。ぜひあわせて参考になさってください。
大規模なビル売却事例を2021年~2023年からピックアップしてご紹介! 売却の流れやポイントも解説
多くの話題と憶測を呼んだ電通の本社ビル売却、噂段階から実際の売却まで
業界に疎いという人でも、広告代理店の代表格としてその名を知らない人はいないほどの巨大企業である電通が、これまた存在を知らない人はいないほどのランドマーク「電通本社ビル」を売却したという事実は、当時センセーショナルに各メディアでも報じられました。
以下では、実際に自社ビルを売却することを検討している方の参考になる情報として、事の次第や電通の対応内容などをご紹介します。
日本最大手の広告代理店、「広告界の覇者」の電通が本社ビルを売却
2021年の9月、電通グループは東京・汐留地区の本社ビルを売却すると発表し、ビジネス業界でも大きな話題となりました。
当該ビルは地上48階、地下は5階という構造の超高層ビルであり、汐留再開発地区である汐留シオサイト内でもひときわ目を引く、ランドマーク的な建築物です。
電通本社ビルは電通グループの本社機能のほか、地下や1~3階、46~47階などの低・高層部にはレストランや劇場、博物館といった一般利用客に開放された都市型複合施設「カレッタ汐留」を擁しています。
当時、電通グループはコロナ禍の影響で広告が減少したことにより、2020年12月期の連結決算において最終利益が1595億円もの赤字となり、抜本的な構造改革を進めているさなかでの出来事でした。
電通本社ビルのなりたち
90年代半ばまで、電通は本社機能やグループ企業を築地や銀座のほか、中央区明石町にある高層ビル「聖路加ガーデン」などへ分散して構えていました。
しかしグループの機能を一元化するという目的を掲げ、1997年に汐留貨物駅跡地の公開入札(国鉄清算事業団)へ応募し、落札したのです。
のちの電通本社ビルとなるこの超高層ビルは、1999年の着工から3年の歳月を経て、2002年11月に完成しました。
建築デザインには、フランスのジャン・ヌーヴェル氏、アメリカのジョン・ジャーディ氏など著名な世界的建築家が携わっています。ウォーターフロントを望むビル南側がブーメラン状の曲面となっており、東側から西側にいくにしたがって表面色が白からグレーへのグラデーションになっているなど、巨大な建築物でありながら観光客にとっても圧迫感のない、目に楽しい建築物として一躍有名になりました。
建物のなかで働く約6000人の電通社員も誇らしくなるような、汐留のランドマークが誕生したのです。
2020年の秋ごろから、売却の噂が出始めていた?
不動産業界では、2020年の秋ごろから電通本社ビルの売却検討の噂が持ち上がり始めていたと、一部メディアが報じています。「あの電通が、あの巨大な本社ビルを売却?」と、不動産界隈では大きなトピックスになっていたことでしょう。
2020年末~2021年にかけて、売却の話が具体的に
不動産ファンド関係者の談にて、電通は2020年末ころから当該ビルの入札に関して幅広い参加を募っており、一部の限定した不動産会社やファンドにも具体的な話をもちかけていたとされています。
実際に年末年始にかけて実施された入札では外資系不動産ファンドを始めとしたわずか数社が参加しましたが、2021年の1月には「東京の不動産会社、ヒューリックが優先交渉権を取得したらしい」との報が、一部メディアによってなされました。しかし実際には条件面での折り合いがついている状況ではなかったため、行く末が注目されていました。
実際に買い手として社名が挙がっていたヒューリック側は、メディアからの取材に対して当時、一貫して「守秘義務契約を締結しているため答えられない」との回答をしていたのです。
最終的に信託受益権化され、SPCへ売却
売却先がヒューリック単独となるとみられていた電通本社ビルですが、とあるメディアの取材にてヒューリックの吉留学社長から「この規模の取引は困難、仮に検討するにしても取得資本についていろいろな検討が必要」との談がありました。
最終的に電通本社ビルの売却は、信託受益権化されたうえで、SPC(特定目的会社)が組成され売却されることとなりました。SPCにはヒューリックを始め複数の投資家が出資しており、出資比率はヒューリックが40%~50%程度、芙蓉グループ系列の企業が20%~30%程度で、そのほかはグループ外の企業であったと報じられています。
売却総額は過去最大規模の3000億円!
ヒューリックを主体としたSPCへ売却されることとなった電通本社ビルですが、その売却額は、譲渡益が約890億円、帳簿価格と合わせた価格がおよそ2600億円、そして諸費用やリースバック関連の会計処理を加えて、売却総額は3000億円超になると報じられました。
この金額は、日本国内のビル取引では当時の過去最大規模だったのです。
電通は賃貸借契約で本社機能を継続
売却された電通本社ビルは、低層部の商業施設部分を除いて電通が賃貸借契約を結び、電通ジャパンネットワーク全体の中核をなす事業拠点として、営業形態を更新することなく使用しつづけています。
メディアから様々な憶測が飛び出した「電通本社ビル売却の噂」、および電通の対応
電通本社ビルの売却検討の噂が持ち上がり始めた2020年の秋ごろから、各メディアでも関連ニュースが報じられていました。
その主たるトピックとしては、「テレワークの導入で電通本社ビルへの出社率は2割以下」といったものから、「1,500億の赤字が原因」「コロナ禍での業績悪化」、そのほか電通の史上最大の巨額赤字となった海外事業「のれん」の減損損失についてなど様々でした。
これを受けて電通グループは2021年1月20日に、「一部報道について」と題したプレスリリース(※1)を発表しました。
リリースの主旨としては、本社ビル売却について検討していることは事実であること、現時点で決定している事項はないこと、などが含まれていました。また、売却を検討している理由についても触れられており、「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」「事業トランスフォーメーション加速のため」という表現がなされています。
また売却がより具体的な検討になった時期、2021年6月29日には、電通グループは「固定資産(電通本社ビル)の譲渡および賃借ならびに譲渡益の計上見込みに関するお知らせ(※2)」というより具体的な、ビル売却検討を正式に認めるリリースを出しています。
※1 出典:dentsu「一部報道について」
https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000369.html
※2 出典:dentsu「固定資産(電通本社ビル)の譲渡および賃借ならびに譲渡益の計上見込みに関するお知らせ」
https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000485.html
電通ビルの売却事例は、大企業の不動産売却事例としてとても参考になる
電通の本社ビル売却は、広告業界以外にも甚大な影響力をもつ、かの電通に関する大きなトピックスであっただけに、噂の初期段階から様々な切り口での報道がなされました。
売却に至るまでの経緯、メディアへの初期対応やのちの正式発表など、多くの企業にとって大変参考になる部分が多いのではないでしょうか。
また実際の売却においての、決算への計上や成長投資資金の確保、売却後の賃貸借契約や購入者側のSPC組成といった流れも、3000億円規模の売却のなかにあってどのように計画的に進められていたのかを振り返ることは大変参考になります。
電通からの各プレスリリースは、前述のように現在でも公式サイト上で残されていますので、さらに詳しく知りたくなられた方は、ぜひ電通グループの公式情報をたどってみてください。
まとめ:
ビル売却の基礎知識から具体的相談まで、お困りの際は「ビル売却どっとこむ」へ
本記事では、2020年末~2021年にかけて業界内外を騒がせた、電通の本社ビル売却についての情報を、時系列の一覧方式でまとめてご紹介しました。
同社の一連の対応や実際の売却詳細は、規模問わず様々な企業が自社ビルを売却する際の参考になることでしょう。