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世界的なエレクトロニクス企業「ソニー」のビル売却事例を具体的に解説

ソニーのビル

ビル売却を検討する際には、特に日本の著名企業の実際の売却事例が気になるものではないでしょうか。本記事では売却額や決算期の営業利益への計上、売却後の動きなどで参考になるひとつの事例として、ソニーのビル売却事例をまとめていま […]

ビル売却を検討する際には、特に日本の著名企業の実際の売却事例が気になるものではないでしょうか。本記事では売却額や決算期の営業利益への計上、売却後の動きなどで参考になるひとつの事例として、ソニーのビル売却事例をまとめています。

▼ビル売却の事例についてはこちらの記事でも総合的にまとめています。ぜひあわせて参考になさってください。
大規模なビル売却事例を2021年~2023年からピックアップしてご紹介! 売却の流れやポイントも解説

【2013年1月】「米国本社ビル」の売却

2013年の1月、ソニーはニューヨークの「米国本社ビル」を、同国の不動産コンソーシアムへ売却しました。売却額は、およそ11億ドル(987億円)とされています。
この売却によってソニーは、6億8500万ドル(615億円)を売却益として、2013年3月期の営業利益へ計上しています。これはソニーの連結営業利益が主要事業となるエレクトロニクス事業にくわえ、映画・音楽・金融事業で構成されており、事業や資産の売却益も適宜計上できる方式がとられていたことによるものです。
2013年3月期は液晶テレビやデジタルカメラ、携帯型ゲーム機といったエレクトロニクス事業における売り上げが想定を下回っているかたちで黒字化が厳しい見込みでしたが、当該ビルの売却益によって、営業利益のかさ上げができたとの見方をされています。

当時、米国本社ビルではおもに音楽・映画事業に従事する社員が勤務していましたが、この売却の後も、当該ビルはリースバック契約によってソニーによる利用が続けられました。
リースバック契約とは、売却後に賃貸借契約を結んでそのまま利用すること(一度も退去せずにそのまま利用しつづけること)を前提とした、賃貸借とセットになった売却方法です。

【2013年2月】「ソニーシティ大崎」の売却

同じく2013年ですが、ソニーは2月に国内においても、東京品川区にある大崎駅近くの自社ビル「ソニーシティ大崎」を売却しています。
売却先は日本ビルファンド投資法人、および国内機関投資家で、売却額は公表で1111億円とされています。この売却については事業ポートフォリオの再編、それに伴う資産の見直しの一環として計画された資産売却の一部でした。
ソニーシティ大崎は当時から現在までソニーの国内主要事業所として5本の指に入るほどの重要拠点であり、売却後に別途賃貸借契約が結ばれています。

【2014年3月】「旧本社ビル(NSビル)」の売却

2014年3月には、東京都品川区、品川駅南西方面の御殿山地区に所在する「旧本社ビル(NSビル)」が売却されています。この際には、当該ビルのほか隣接する棟の土地と建物も売却に含まれました。
売却先は住友不動産であり、およそ161億円の売却額となったことが報じられています。
この売却において、売却益は2014年6月期におよそ100億円の売却益として計上とつたえられています。

NSビルが所在する品川区の御殿山地区は、ソニーが1946年に日本橋で設立後、翌年となる1947年に移転したいわば「創業の地」でした。この売却により御殿山地区に残るソニーの自社ビルは歴史資料館や研修所など僅かな不動産のみとなったのです。そのため、ソニーの歴史をつかさどるこのビルの売却に関してはビジネス界隈のみならず世間でも大きな話題となりました。

NSビルは1990年の竣工で、2007年に新しい本社ビルへ移転するまではソニーの本社拠点として使われていた建物です。売却当時、NSビルや隣接する棟ではデバイス事業、法人事業やメディカル事業などで合わせておよそ800人ほどの社員が勤務していましたが、数カ月以内に新しい本社ビルを含めた近隣拠点へ移動すると公表されました。

この時期のソニーについてはエムスリー株の一部を378億円で売却、スカパーJSATホールディングス株を152億円で売却、楽曲情報事業のグレースノートを176億円で売却、そして主要事業のフラッグシップであったパソコン「VAIO」事業の譲渡など、激動の中にあったといえるでしょう。

【2018年2月】子会社SMEの「SME市ヶ谷ビル」「SME乃木坂ビル」の売却

こちらはソニーではなくグループの音楽子会社「ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)」での売却事例となりますが、あわせてご紹介します。
2018年2月、ソニー・ミュージックエンタテインメントは所有していた自社ビルのうち東京都新宿区の「SME市ヶ谷ビル」と、東京都港区の「SME乃木坂ビル」を売却すると発表しました。グループの総合力アップ、および業務の効率化を図ったうえでの売却とのことで、この売却には建物および敷地がふくまれています。
売却先に関しては非公開でしたが、2017年度第4四半期の営業利益として、およそ100億円の譲渡益を計上すると公表されています。

売却された2つのビルでは、当時SMEのほかソニー・ミュージックコミュニケーションズ、ソニー・ミュージックアクシスといったグループ企業が入居し営業をおこなっていました。売却後はそれぞれ、SME乃木坂ビルの一部を賃貸借契約で利用継続するほか、千代田区のSME六番町ビルや港区の東京ミッドタウン・ミッドタウンタワーへ拠点を移しています。

事例にみる、「自社ビル売却」の決算内容への影響

本記事ではソニーの過去の自社ビル売却事例をご紹介しましたが、最後に、一般論として自社ビル売却が決算内容に与える影響について、まとめて解説します。

決算内容に直結するビル売却のメリット

自社ビル売却をおこなうと、業績が芳しくない時期において比較的容易に、大きな資金調達が実現します。
その結果、以下のように自社の財務指標が改善されるでしょう。
・手元の現金が増え、資金繰りを一気に安定させられる
・借入金を大きく返済でき、自己資本比率が向上する
・会社が成長するための新たな事業投資もおこなえる

本記事でご紹介した売却事例においても、それぞれ売却発表時点で、直近の決算において売却益を計上見込みが公表されていました。売却の結果、最終損益で大きな黒字を果たせています。

また、エイベックスでは、2021年3月期で既に290億円の売却益を計上しており、その結果、最終損益で約100億円以上の黒字となっています。

このように、「自社ビルの売却」は、少なくとも直後の決算内容への影響という面で多大なメリットがあるといえるでしょう。ただしこのような売却は業績が悪化している時期の経営改革の一環として決断されることが多くなっているため、もし売却で短期的な業績改善、財務改善へつながったとしても、その後のビジョンまでがしっかりと明確である必要があります。
もし売却後のビジョンが不明瞭であった場合や、ビジョン通りの経営がおこなわれなかった場合には、売却でせっかく得られた資金が一時しのぎにとどまってしまい、長期的にみると無駄になってしまうことでしょう。
そのため自社ビルの売却は経営層の手腕が問われる大きな決断であり、必要に応じて専門家へ事前相談することもとても大切です。

ビル売却の与信管理上のポイント

ビル売却をおこなう際には、与信管理上のポイントについても検討しておくことが重要です。
自社ビルの売却は前述のとおり短期的な決算内容の改善、経営再編などの面で大変効果的であり、得られた売却資金を様々な投資にあてることも可能なため、従来からおこなっていた取引をより大きくできる可能性も十分にあります。しかしその一方、ビル売却という事実は他社からみるとその背景に業績不調や経営不振といったネガティブな状況を感じられやすいため、他社からの与信管理上、「企業評価の見直し」や「与信限度額の再設定」の対象となってしまう可能性があります。

そのため、自社ビルを売却する際には取引先や顧客含め信頼を失ってしまわないように、オフィシャルな立場で売却内容や売却理由に関する明確な公表、売却後のビジョンの伝達などをおこなっておくことが重要です。

ご参考までに、以下では本記事でご紹介した「ソニーシティ大崎」売却時の、ソニーによる報道資料へのリンクを掲載します。ぜひ参考になさってください。

▼SONY報道資料(2013年2月28日)「当社所有のオフィスビル「ソニーシティ大崎」の譲渡及びそれにともなう譲渡益の計上に関するお知らせ」
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/News/Press/201302/13-030/

ビル売却は長期的な計画をもったうえでの決断が大切

本記事では、ビル売却の参考になる事例として日本が誇る世界的なエレクトロニクス企業、ソニーのいくつかのビル売却事例をご紹介しました。
ビル売却にあたっては、大きな資金を得られることによる財務指標の改善・決算へのメリットが得られます。しかしそのメリットを最大限に活かし、その場しのぎの改善に終わらせないためには事前の慎重な検討・長期的な計画をしておくことがとても大切です。

まとめ

「ビル売却どっとこむ」では、ビル売却についてお悩みのオーナー様のお役に立てる、様々なビル売却関連情報をお届けしております。ぜひチェックしてみてください。