2024年04月15日
大規模なビル売却事例を2021年~2023年からピックアップしてご紹介! 売却の流れやポイントも解説
活用しきれていない建物がある、財政難で持ち直すための大きな資金を得たい、など様々な理由で本社ビルや拠点ビルを売却することを検討されている企業も多くあることでしょう。本記事では、ビル売却を検討する際に参考となる、ビジネス界 […]
活用しきれていない建物がある、財政難で持ち直すための大きな資金を得たい、など様々な理由で本社ビルや拠点ビルを売却することを検討されている企業も多くあることでしょう。本記事では、ビル売却を検討する際に参考となる、ビジネス界で話題にのぼった様々な実際のビル売却事例をご紹介します。
あわせて記事の後半では、実際にビルを売却する際の流れやポイントも解説していますので、ぜひ参考になさってください。
▼本記事でご紹介する事例のほか、以下の各記事でも具体的なビル売却事例をご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
「2023年」にニュースになった大規模なビル売却事例
本記事でまずは、様々な大手企業・グループによる大規模なビル売却事例を物件概要や売却額などとともにご紹介します。
2023年、2022年、2021年と遡りつつ、直近3年間の目立った事例を挙げています。
売却先は資産運用会社であったり、当該物件のテナントであったりと様々です。
まずは2023年の事例からご覧ください。
※以下、ご紹介する各事例における「売却額」は、公表のほか各メディアによる推測額も一部含まれています。
東急プラザ銀座【1300億円】
アクティビア・プロパティーズ投資法人が、銀座・数寄屋橋交差点に面する複合商業施設「東急プラザ銀座」を売却しました。
売却先は三井住友信託銀行株式会社の連結子会社である三井住友トラスト・パナソニックファイナンスです。
売却額は、建物と土地持分ふくめ、およそ1300億円と報じられています。
小田急第一生命ビル、小田急センチュリービル【1300億円】
神奈川県および東京都の大手私鉄である小田急電鉄が、新宿区西新宿のビジネスビル「小田急第一生命ビル」および「小田急センチュリービル(ハイアットリージェンシー東京)」を売却しました。
売却先は、小田急第一生命ビルが第一生命保険出資の国内法人で、小田急センチュリービルがアメリカの投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツおよび香港の大手不動産ファンド運用会社ガウ・キャピタル・パートナーズです。
売却額は、2物件の合計でおよそ1300億円と報じられています。
御殿山SHビル【700億円】
積水ハウスの完全子会社である積水ハウス・アセットマネジメントが運用する投資法人、積水ハウス・リートが、品川区北品川の都市型データセンタービル「御殿山SHビル」を売却しました。
売却先は、もともと当該物件の一部テナントであった国内大手のシステムインテグレーターTIS株式会社で、売却額はおよそ700億円と報じられています。
エディオンなんば本店【540億円】
シンガポールの不動産投資顧問会社メープルツリー・インベストメンツが、保有していた大阪・難波の商業ビル「エディオンなんば本店」を、テナントであったエディオンへ売却しました。エディオンにとっては、旗艦店である当該建物を自社保有する方が、長期的にみて店舗運用費用を抑えられるとの判断があったとみられています。
売却額はおよそ540億円と報じられています。
ロイトン札幌など合計27物件【1200億円】
大和ハウスグループが、「ロイトン札幌」を始めとした所有ホテル合計27物件(合計7124室)を、シンガポールの不動産投資外車SCキャピタルパートナーズへ売却しました。
売却額は合計で、およそ1200億円と報じられています。
DPLつくば阿見Ⅰ-Aなど合計6物件【1000億円】
大和ハウス工業が開発し、アメリカの投資ファンド運用会社ブラックストーン・グループが保有していた、マルチテナント型工業団地「DPLつくば阿見Ⅰ-A」を含む合計6物件が売却されました。
売却先はシンガポール政府投資公社(GIC)で、売却額は合計でおよそ1000億円と報じられています。
「2022年」にニュースになった大規模なビル売却事例
続いて、2022年の売却事例をご紹介します。
みなとみらいセンタービル【1000億円】
東京都心にて主に保有賃貸業・投資開発事業をおこなっている不動産会社ヒューリックが、みなとみらい駅に直結する地下2階・地上21階建てのランドマークビル「みなとみらいセンタービル」を売却しました。
売却先はイギリスの資産運用会社M&Gインベストメンツで、売却額はおよそ1000億円と報じられています。
大手町プレイス(イーストタワー)【4364億2100万円】
東京・大手町の大規模ビジネスセンターである大手町プレイスにて、政府保有床の入札が実施されました。政府保有床とは、市街地再開発事業において、事業前の権利者に権利が与えられることのない、いわば開発事業によって新たに生まれた敷地(や床)のことです。
この入札により、「大手町プレイスのイーストタワー」がトーセイ・アセット・アドバイザーズを始めとした企業グループへ売却されました。
売却価格は、4364億2100万円と報じられています。
ザ・プリンスパークタワー東京など合計31物件【1500億円】
西武グループの持株会社である西武ホールディングスが、保有していた「ザ・プリンスパークタワー東京」含む合計31物件を、シンガポール政府投資公社(GIC)へ売却しました。
売却価格は、31物件の合計でおよそ1500億円と報じられています。
グラマシー京橋など合計32物件【600億円】
香港の大手不動産ファンドであるガウ・キャピタル・パートナーズが、日本国内の高層マンション「グラマシー京橋」を含む、住宅ビル合計32物件を取得しました。
売却額は合計でおよそ600億円と報じられています。
グレースレジデンス東京など合計30物件【492億円】
イギリスの資産運用会社M&Gインベストメンツが、「グレースレジデンス東京」を始めとして東京・名古屋・大阪の賃貸マンション・ビル合計30物件を取得しました。
売却額は合計でおよそ492億円と報じられています。
「2021年」にニュースになった大規模なビル売却事例
事例集として最後に、2021年の大規模な売却事例をご紹介します。
電通本社ビル【2700億円】
大手広告代理店電通の持株会社である電通グループが、港区東新橋の「電通本社ビル」を売却しました。
売却先はSPC(特別目的会社)芝口橋インベストメントで、売却額はおよそ2700億円と報じられています。
日本通運旧本社ビル【732億円】
大手運送会社である日本通運が、港区東新橋に所在する「旧本社ビル」を売却しました。
売却先は長野県に本社を置く電気部品メーカー、ミネベアミツミです。
売却額はおよそ732億円と報じられています。
ESR市川ディストリビューションセンター【950億円】
ESRが千葉県市川市のマルチテナント型物流施設である「ESR市川ディストリビューションセンター」を売却しました。
売却先はイギリスのプルーデンシャル系不動産ファンドであるM&Gリアルエステートです。
売却先はおよそ950億円と報じられています。
都ホテル京都八条など合計8物件【600億円】
近鉄グループホールディングスが、保有していた「都ホテル京都八条」を始めとした宿泊施設合計8物件を、アメリカの投資ファンド運用会社ブラックストーン・グループへ売却しました。
売却額は8物件の合計でおよそ600億円と報じられています。
世間で本社ビルや自社ビルの売却事例が増えているのは何故?
記事冒頭でご紹介した事例を始めとして、特に近年、本社ビルや拠点ビルなどを売却する事例が目立って増えてきています。
そもそも本社ビルや自社ビルを保有するということは、その企業にとってのステータス、自社の規模や信用度を示すことのできる大きな手段であり、本来であれば手放したくはないものであると考えられます。
しかし近年の売却事例では、誰もが知っている企業、事業規模もかなりの大きさとなっている企業での売却事例が多くみられています。
こういった売却事例がなぜ近年起きやすくなっているのかを解説します。
新型コロナウイルス感染症の影響・余波
日本で初の感染者が確認された2020年以降、新型コロナウイルス感染症は一般生活様式のみならず、ビジネス界全般においても大変深刻な影響をもたらしました。
緊急事態宣言の発出にともない不要不急の外出を控える動きがひろまり、世間全体で消費活動が抑制され、経済にも大きな影響が出たのです。
中小企業・大企業など事業規模を問わず、コロナ禍で業績が大幅に悪化し、経済的危機を迎えた企業は数知れません。
コロナ禍の最中はもとより、事業再編や縮小で乗り越えた企業においても、枯渇した現金を補填するために本社ビルや自社ビルの売却を検討する事例が多くみられています。
ビルの売却後は、退去しほかの拠点へ移るケースもありますが、そのビルが事業にとって重要な拠点である場合は、そのまま当該ビルにテナントとして入居するケースも多くなっています。
働き方改革・テレワークなどへの対応
この点も、ビジネス界全般に活動が広がったのは主に新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止という観点が大きかったといえますが、コロナ禍が落ち着いたあとも、テレワークを導入する企業が増えつづけています。
厚生労働省が推進する働き方改革への対応という面もあり、テレワーク・フリーアドレスといった新しい労働の在り方が具体的に各企業で採用されており、事業をおこなうビルや事務所において「建物の規模のわりに、出社する人数が少ない」という状況も多くみられるようになってきました。
もともと、出社人数や業務の大きさに応じて自社ビルを構えていた企業のなかには、「現在の状況や今後の見通しでは、ビルを維持するメリットが少ない」という判断に至るケースも増え、そのような場合に売却という選択がとられています。
耐震基準の問題
2011年の東日本大震災が被災地および日本国内全般にもたらした甚大な被害はいまだ、一切影響が残っていないとはいえないほどです。
2024年にあっても、年初から能登半島にて大きな地震が起こり、多くの方々が深刻な被害を受けてしまいました。
地震大国といわれ、今後の大地震の発生についての可能性もたびたび取り沙汰される日本では、ビジネスで運用する不動産においても、地震への対策が正しくとられているかという観点が非常に重要です。
そんななか、自社ビルが旧耐震基準で建てられたビルであった場合には、移転する動きが活発となっています。
旧耐震基準はおよそ40年以上前の1981年5月までの建築確認の際に適用されていた基準であり、「震度5強程度で建物が倒壊しない」「破損した場合でも補修可能」といった内容の構造基準です。
1981年6月からは「震度6強~7程度でも建物が倒壊しない」といった新しい耐震基準が適用されており、東日本大震災で中心地の最大震度が7を記録したこと、周辺地域で6強であったことなどを踏まえると、この新耐震基準が今後においても満たしておかなければならないスタンダードであるといえます。
事業のうえで現在の本社ビルや拠点ビルの立地がいくら最適であっても、もし旧耐震基準で建てられたものであるならば、企業にとっては大きなリスクです。
特に本社ビルや重要拠点ビルがこれに該当する場合、退去・売却をおこなったうえで新しいビルへ移転するという選択をとる企業が多くなっています。
本社ビルや自社ビルを売却する際はどのような流れになる?
資金確保、事業再編などの理由でもし自社が保有するビルを売却する場合には、取り扱いを依頼する不動産会社を探したうえで、媒介契約を締結し、売り出しが始められることとなります。
ここでは各項目に分けて詳しく解説します。
仲介してくれる不動産会社を選定する
ビルを売却するには、まず買い手を探してくれる不動産会社を選定する必要があります。
特にマンションやアパートなどの一般的な賃貸物件とは異なり、商業ビルを売却する際にはどうしても買い手の絶対数が限られてしまいます。
そのため、売却したいビルの種別に応じて専門性を持っている不動産会社を見つけることが大切です。実際に当該ジャンルの不動産に関しての仲介実績、取り扱い棟数などをチェックしておくようにしましょう。
また、単に買い手を探してくれるだけでなく、不動産が立地しているエリアの土壌汚染や地盤についての調査をおこなってくれたり、自然災害リスクを始めとした懸念点をピックアップしてくれて最適な価格設定・事前準備・買い手募集へつなげてくれたりといった付加価値を提供する不動産会社もあります。
不動産会社と媒介契約を締結する
不動産会社が決まったら、不動産媒介契約を締結します。
不動産媒介契約とは、売り手と買い手を仲介する不動産会社(宅地建物取引資格を持つ仲介会社)が、当事者との間で締結することを宅地建物取引業法によって義務付けられている契約です。
この契約によって、不動産仲介会社が取引全般において実際にどのようなサービスを提供するのか、業務の内容や仲介手数料の額といったことが約束され、不動産仲介におけるトラブルが未然に防がれることとなります。
不動産媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」という3種の契約形態があります。
以下で順に解説します。
専属専任媒介契約
売主が、「この不動産会社だけに媒介をお願いする」ということを約束する契約となります。
専属専任媒介契約を締結した場合は、当該物件の売買について同時にほかの不動産会社と媒介契約を結ぶことはできません。
当該物件の買い手探しについては契約を結んだ1社の活動に委ねることとなり、この場合契約期間は3カ月以内と定められています。また不動産会社には少なくとも週1回以上の売却活動報告が義務付けられ、国土交通大臣が指定する不動産流通機構「レインズ」への登録義務も発生します。
専任媒介契約
専任媒介契約を締結した場合も売主がほかの不動産会社と同時に媒介契約を結ぶことはできませんが、「売主がほかの手段で自ら買い手を探す、見つける」といったことは可能です。
この場合も契約期間は3カ月以内となり、不動産会社には2週に1回以上の売却活動報告と、「レインズ」への登録が義務付けられます。
一般媒介契約
一般媒介契約は売主側の活動がもっとも制限されない契約内容で、同時にほかの不動産会社とも媒介契約を結ぶ、ということが可能となっています。また、ほかの手段で自ら買い手を探すこともできます。
契約期間は、行政指導では3カ月以内とされており、「レインズ」へは必ずしも登録しなくてよいことになっています。
売り手側の活動が制限されないというメリットがある半面、不動産会社にとっては「専任
ではない」ということから、買い手探しの業務にあまり注力してもらえない、当該物件の販売活動が積極的におこなわれづらい、というデメリットが生じる可能性もあります。
売却物件の査定、売り出し価格の決定
いずれかの媒介契約を締結したら、不動産会社に売り出す物件を詳しく査定してもらったうえで、売り出し価格を決定します。
売り出し価格が決定すればいよいよ販売活動の開始です。締結された業務内容に応じて、不動産ポータルサイト上や専門誌、広告媒体などで販売活動がおこなわれます。
売却された自社ビルはどうなる?
様々な理由で売却されたビルが、その後どのように使われるかという点についても事例ごとに様々となっています。
ここでは主なパターンをご紹介します。
売り手がそのままテナントとして入居するケース
特に事業上の所要拠点・本社ビルなどを売却する場合は多くがこれにあたります。
売却先としては不動産ファンド・資産運用管理会社などが選ばれ、売却後は売り手の企業がそのままテナントとして入居し、使用し続けます。
このケースの場合は、買い手としても「入居者がすでに決まっている」ビルを買い取ることとなり、またその入居者はそれまでその物件を保有していた信頼性のある企業ということにもなるため、大規模なビルであっても買い手がすぐに見つかりやすいでしょう。
売り手が移転するケース
本社ビルや拠点ビルを売却した後に移転するケースも当然ながらあります。
この場合には、まずそのビルが好立地で建築物の状態も良好のケースでは、商売上よい条件となる物件を探しているほかの企業が即入居する場合が多くあります。
しかしビルが売却された理由が旧耐震基準であったり、老朽化が目立っていたりという場合には、そのまま利用されるよりも、解体して土地が別の事業に利用されたり、新たな収益性の高い建物が建てられたりということが多くなるでしょう。
ビル売却の際には、経験を積んだプロに相談することが大切
本記事では、主に大規模なビル売却事例に焦点を絞り、物件概要や売却額など様々な事例情報を一覧でご紹介しました。
ビルを売却する際には、その理由・目的・事業上のビジョンなどがオーナー様によって様々です。
本社ビルや拠点オフィスなど、自社にとって大切な資産である不動産を売却する際には、ビル売却についての経験値が高い不動産会社に相談することが大切です。
ビルを売却するという選択をとる理由は企業によって様々ですが、いずれの場合でも、後悔のない最良のビル売却を実現するためにはその売却が「今後の事業展開にプラスに働く」ことがなにより重要です。